共通テスト「化学」過去問解説

2023年度(令和5年度)大学入学共通テスト 本試


どこよりも詳しく、わかりやすい過去問の分析と解説(解説動画付き)


第3問 無機化合物

問1 フッ化水素HFの性質

周期表17族元素のフッ素F、塩素 Cl、臭素 Br、ヨウ素Iはハロゲン元素に分類され、

これらの元素の水素化合物がハロゲン化水素でありフッ化水素 HF 、塩化水素 HCl 、臭化水素 HBr 、ヨウ化水素 HI です。

 

この中で周期表の一番上にあるフッ素Fの水素化合物であるフッ化水素 HF だけは、他のものと少し性質がちがいます。この問題では、それが問われています。選択肢を1つずつ、みていきましょう。

 

 

①: 塩化水素 HCl 水溶液の「塩酸」が強酸であることは、よく知られていることです。

同じくハロゲン化水素である臭化水素 HBr 、ヨウ化水素 HI も強酸です。

 

フッ化水素だけは、電離度が小さく弱酸です。この選択肢は正しいです。

 

 

②:フッ化物イオン以外のハロゲン化物イオンは銀イオンと反応し、沈殿を生じます。

 

 Ag⁺ + I⁻ → AgI ↓(黄色)

 Ag⁺ + Br⁻ → AgBr ↓(淡黄色)

 Ag⁺ + Cl⁻ → AgCl ↓(白色)

 

フッ化銀 HF という物質もありますが、これは水に溶けやすい物質です。

沈殿が生じることはありません。この選択肢は正しいです。

 

 

③: 「水素はFON(フォン)と握手する」…という有名なチャートがあります。

これは、水素結合をもつ化合物として、F(HF:フッ化水素)、O(H₂O:水)、N(NH₃:アンモニア)に特に注意せよ…という意味です。

 

フッ化水素HFは、水素結合をもつ化合物です。

 

水素結合をもつため、沸点は他のハロゲン化水素よりも高くなります。

この選択肢は正しいです。

 

 

④:ハロゲンの単体は電子を受け取りやすいので、一般に酸化力が強いといえますが、

ハロゲンどうしの酸化力の大小関係は、周期表の上のものほど大きいです。

(周期表の右上のものほど電気陰性度が大きいので、そのためです。)

 

  F₂ > Cl₂ > Br₂ > I₂

 

 左側にあるものほど、電子を受け取って陰イオンになりやすいと考えていいです。

(周期表の上にあるものほど、いちばん外側の電子殻が原子核に近いですので、それはなんとなく納得できますよね。)

 

例えば、ヨウ化物イオン I⁻ を含む水溶液にフッ素 F₂ を通じると、F の方が陰イオンになりやすいので、

 

 2I⁻ + F₂ → 2F⁻ + I₂

 

…の反応が起こり、ヨウ素が析出します。

 

この選択肢に書かれていることは、反対ですね。これが誤りを含む選択肢です。

 

正解 ④

 

問2 金属イオン(陽イオン)の系統分析

イオン化傾向が重要です。

 

多くの化学的現象が、イオン化傾向で説明できます。

イオン化傾向で考える習慣をつけましょう。

 

この問題でも、まず最初にやるべきことは、与えられた金属イオン(陽イオン)をイオン化傾向の順に並べることです。(私からすると、これをせずに問題を解こううとすること自体、信じられません。まぁ、中にはわざわざ書き出さなくてもできる人はいるでしょうけどね。)

 

次のようになります。

 

 「 Al³⁺ , Zn²⁺ , Fe³⁺ , Cu²⁺ , Ag⁺ 」

 

沈殿のつくりやすさも、イオン化傾向に現れます。

こう並べて、左にあるものほどイオン化傾向が大きく、独立したイオンでいたがり沈殿しにくいです。

右にあるものほど、イオン化傾向が小さく沈殿しやすいです。

 

この問題では、この五つのうち二つのイオンを含む水溶液を考え、この二つの金属イオンを特定します。

操作内容と結果を1つずつみていきましょう。

 

 

操作Ⅰ:希塩酸 HCl に含まれる塩化物イオン Cl⁻ は、金属イオンと沈殿を作りやすいイオンではありませんが、イオン化傾向の小さい銀 Ag とは塩化銀 AgCl の白色沈殿をつくります。

(注: Cl⁻ は特異的に鉛イオン Pb²⁺ とも沈殿を生じます。)

 

この操作の結果、沈殿は得られませんでした。この水溶液には、銀イオン Ag⁺ は存在していなかったと判断できます。よって、この段階で・・・

 

 「 Al³⁺ , Zn²⁺ , Fe³⁺ , Cu²⁺ 」

 

・・・の4つのイオンにしぼられました。

 

 

操作Ⅱ:操作Ⅰで塩酸を加えたので、水溶液は「酸性」になっていることに留意しましょう。

 

この状態で、硫化水素 H₂S を加えます。

 

水溶液は酸性なので水素イオン  H⁺ が多数存在し、

 H₂S ⇆ 2H⁺ + S²⁻ の電離が、それほど進みません。

 

イオン化傾向列でいうと、イオン化傾向の小さい「Sn、Pb、Cu、Hg、Ag」の範囲にあるものが硫化物イオン S²⁻ と反応し、沈殿を生じます。

 

操作Ⅱの実験結果で沈殿が生じました

 

この水溶液中に存在するイオンの中で、「Sn、Pb、Cu、Hg、Ag」の範囲にあるものは、銅イオン Cu²⁺ だけです。硫化銅 CuS の黒色沈殿が生じたとわかります。

 

これで答えの1つとして、銅イオン Cu²⁺ が確定しました。

 

 「 Al³⁺ , Zn²⁺ , Fe³⁺ , 『Cu²⁺』 」

 

・・・Al³⁺、Zn²⁺、Fe³⁺ の3つの中から、残りの1つをつきとめましょう。

 

 

操作Ⅲ:もともと硝酸塩水溶液でしたので、加熱して硫化水素を追い出し硝酸を加えた…というのは、元の状態に戻したということです。確認しますと今・・・

 

「 Al³⁺ , Zn²⁺ , Fe³⁺ 」・・・の3つのイオンのいずれか1つが存在しています。

(銅イオンはすでに操作Ⅱで沈殿として取り出されています。)

 

これに、過剰のアンモニアを加えました。 

 

アンモニアを加えたので水溶液は弱塩基性になっています。

もし、この水溶液に Al³⁺ 、 Fe³⁺ が存在していたとしたら、それぞれ Al(OH)₃ の白色ゼリー状沈殿、Fe(OH)₃ の赤褐色沈殿が生じるはずです。

 

ところが、実験結果では沈殿が生じなかったので、これらのイオンは存在していなかったとわかります。

 

亜鉛イオン Zn²⁺ も塩基を加えると、水酸化亜鉛 Zn(OH)₂ の白色沈殿を生じますが、過剰のアンモニア NH₃ を加えると錯イオン [Zn(NH₃)₄]²⁺ をつくって水にとけます。

(☆過剰の NH₃ で錯イオンをつくって水にとけるイオンとしては、Zn²⁺ 、Ag⁺ 、Cu²⁺ をおさえておけばよいです。)

 

この水溶液に亜鉛イオン Zn²⁺ が含まれていたことは、操作Ⅳで塩基性条件下で硫化水素を加えると沈殿を生じることで確認できます。

 

イオン化傾向の「Zn、Fe、Ni」の範囲にあるものは、塩基性条件ならば、硫化水素を加えると沈殿を生じます。

 

正解 ③、⑤

問3a 金属の特定

反応式から確認しましょう。

便宜的に、X、Yを、そのまま元素記号として扱います。

 

〔Xと希塩酸の反応〕

Xが1族元素のとき: 2X + 2HCl → 2XCl + H₂↑

Xが2族元素のとき:  X + 2HCl →    XCl₂ + H₂↑

 

〔Yと水の反応〕

Yが1族元素のとき: 2Y + 2H₂O → 2YOH + H₂↑

Yが2族元素のとき:  Y + 2H₂O →   YOH + H₂↑

・・・ただし、ベリリウム Be やマグネシウム Mg は常温の水とは反応しないので、Yが2族元素とした場合、あてはまる可能性があるのはカルシウム Ca だけになります。

(Be と Ca は2族元素ですが、アルカリ土類金属からは外れます。この2つは、最外殻と原子核との距離が近いので他の2族元素と比べると反応性が小さいです。)

 

・・・どちらの反応にしても、金属X、Yと発生した水素 H₂ の物質量の比が、

X、Yが1族元素のとき…「(XorY)=2:1」

X、Yが2族元素のとき…(XorY)=1:1」・・・となります。

 

X、Yを「1」として比較してみると、

X、Yが1族元素のとき…「1:1/2」、X、Yが2族元素のとき…「1:

・・・となるので、一定の物質量の金属X、Yを反応させたとき、1族元素だった場合よりも2族元素だった場合の方が、2倍の水素 H₂ が発生することがわかります。

 

 これと図2から、おそらく金属Xが2族元素、金属Yが1族元素であろうと、推測ができます。(あくまで推測であり、まだ確定ではないので注意です。)

 

 

気体定数が与えられていますが、標準状態という条件も与えられています。

 

ですので、原子量をMとして、「=2:1」、あるいは「=1:1」という等式を立て、Mの値に近いものを選んでいくという方針で進めましょう。

 

各金属元素の原子量は1ページ目に与えられていて、1族元素のリチウム Li「6.9」、ナトリウム Na「23」、カリウム K「39」、2族元素のベリリウム Be「9」、マグネシウム Mg「24」、カルシウム Ca「40」です。

 

 反応した金属の質量を w〔mg〕、モル質量を M〔 g/mol〕とすると、その物質量は…

 発生したH₂の質量を v〔mL〕とすると、その物質量は標準状態なので…


よって、「反応した金属の物質量:生成した水素の物質量」は・・・

両辺に 10³ をかけて簡単にしておきましょう。

これを①式とします。


この式の、w と v には図2から読み取れる値を入れ、「=2:1」あるいは「=1:1」として対応する M の値を調べて答えです。

 

金属Xから調べましょう。

図2から読み取れるどの値の組でもいいですが、なるべく簡単にこなしたいですね。

 

水素の体積が「22.4」mLというところを使いましょう。

そうすれば、右辺がちょうど1になり扱いやすいです。

 

対応する金属の質量は、「24」gくらいでしょうか。

…目分量(だいたい)でいいですよ。数値が1~2くらいずれていても、なんの問題なく答えを出せます。

 

①式に w=24、v=22.4 を代入します。

金属Xは2族元素と予想したので、まずは「=1:1」としてみましょう。

右辺が「1」になるので、左辺の「24/M」も「1」になればよいです。


与えられた2族元素の原子量をみると、マグネシウム Mg が24なので、「24/M」がぴったり「1」になります。

これが答えでいいでしょう。

 

念のため1族元素の可能性も考え「=2:1」としたものも考えてみましょう。

同じく右辺が「1」になるので、左辺の「24/M」は「2」になればよいです。


そのためには、Mが24の半分の12くらいになればよいですが、与えられた1族元素の中には原子量が12くらいのものはみあたりません。

 

金属Xは、マグネシウム Mg でよかったと判断できます。

 

 

次に金属Yです。

 

同じく水素の体積が「22.4」mLというところを使いましょう。

対応する金属の質量は、「45」gくらいです、

 

①式に w=45、v=22.4 を代入します。

金属Yは1族元素と予想したので、まずは「=2:1」としてみましょう。

右辺が「1」になるので、左辺の「45/M」が「2」になればよいです。


そのためには、Mが45の半分の22~23くらいになればよいですが、与えられた1族元素の中でナトリウム Na の原子量が23で、これでいいでしょう。

 

これも念のため2族元素の可能性もあるとし、「=1:1」としてみると・・・

Mが45くらいあれば1:1になりますが、もっとも原子量が大きいカルシウム Ca でも40で、これでは誤差の範囲内とは言えないでしょう。


よって、金属Yはナトリウム Na と判断できます。

 

正解 X:⑤   Y:②

問3b 乾燥剤の順番

混合物中の水分を取り除くのが乾燥剤です。

ソーダ石灰、塩化カルシウムは乾燥剤として有用です。

 

さらに、ソーダ石灰には二酸化炭素を吸収する作用もあります。

 

「塩化カルシウム → ソーダ石灰」の順に気体を通せば、H₂O はすべて塩化カルシウムに吸収され、CO₂ はすべてソーダ石灰に吸収されるので、それぞれの質量の増加量から、発生したH₂O および CO₂ の質量を調べることができます。

 

逆だと、ソーダ石灰が H₂O と CO₂ の両方を吸収してしまうので、それぞれの質量を調べることはできません。

 

なお、酸化銅(Ⅱ)はフェイクの選択肢で、有機化合物の元素分析のところで、試料を完全燃焼させるための酸化剤として使われます。(そこでも、ふつうそのあと塩化カルシウム→ソーダ石灰の順に通すという操作をしています。)

 

正解 ③

問3c 物質量の割合

その場で導こうと思えば導けますが、リード文からも、水酸化マグネシウム Mg(OH)₂ や炭酸マグネシウム MgCO₃ を加熱したときの反応は確認できます。

 

水 H₂O と二酸化炭素 CO₂ が発生し、酸化マグネシウム MgO だけ残るというので、

 

 Mg(OH)₂ → MgO + H₂O ・・・①

 

 MgCO₃ → MgO + CO₂ ・・・②

 

いずれも係数が「1:1:1」です。

 

発生した水、および二酸化炭素の物質量(モル数)が、そのまま反応後に残った酸化マグネシウムの物質量や、もともとあった水酸化マグネシウム、および炭酸マグネシウムの物質量ということになります。

 

ここで、問われていることを整理しておきましょう。

 

 

物質量の割合が求められているので、最初から物質量(mol数)で考えていくのが速いでしょう。

残った MgO は2.00gです。MgO の式量は 24+16 より「40」なので、2/40=0.05〔mol〕です。

 

この 0.05mol というのは、もともとあった MgO の物質量と、Mg(OH)₂ と MgCO₃ の分解によって生じた MgO の物質量の合計です。

 

よって、Mg(OH)₂ と MgCO₃ の分解によって生じた MgO の物質量の合計を求め、0.05mol からひけば、もともとあった MgO の物質量となり、これが焦点です。

 

与えられた H₂O:0.18g と CO₂:0.22gという質量も物質量に換算しましょう。

式量は、それぞれ「18」、「44」です。

 

H₂O:0.18/18=0.01mol

①式から、分解で生じた MgO は 0.01mol 、もともとあった Mg(OH)₂ も 0.01mol だったとわかります。

 

CO₂:0.22/44=0.005mol 

②式から、分解で生じた MgO は 0.005mol 、もともとあった Mg(OH)₂ も 0.005mol だったとわかります。

 

よって、加熱後に残っていた 2.00g(0.05mol)の MgO のうち、もとからあった MgO の物質量は、

 0.05-(0.01+0.005)=0.05-0.015=0.035〔mol〕

 

加熱前の混合物Aについて、物質量で考えると…

 MgO:0.035mol、Mg(OH)₂:0.01mol、 MgCO₃:0.005mol

・・・の計、0.035+0.01+0.005 より 「0.05mol」ありました。

 

 

その割合は、0.05mol 中 0.035mol なので、分数で・・・

「0.035/0.05」

 

…分母を簡単にすることだけを考えればいいです。

分子・分母に10をかけてから2をかけましょう。分母は1になって、なくなります。

(くわしくは解説動画参照)

 

  (0.035×10)/(0.05×10)=(0.35×2)/(0.5×2)=0.7

 

百分率は全体を100と考えたときの割合なので、これを100倍すればパーセントで表した割合になります。

0.7×100=70

 

よって、70%になります。

 

正解 ④

 


第3問は以上です。

ご意見・ご感想、お待ちしています。


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