共通テスト「化学」過去問解説

2023年度(令和5年度)大学入学共通テスト 本試


どこよりも詳しく、わかりやすい過去問の分析と解説(解説動画付き)


第5問 硫黄Sの化合物

問1a H₂SとSO₂の発生と反応

① 「弱い酸は出ていけ(弱酸の遊離)」の反応です。希硫酸に比べ弱い酸の硫化水素が遊離します。

  (これについては、動画の方で、もう少しくわしくふれておきます。)

   FeS + HSO₄ → FeSO₄ + H₂S ↑  ・・・この選択肢は正しいです。

 

 

② ナトリウムはイオン化傾向がとても大きい元素ですし、硫酸は強酸です。

 硫酸ナトリウムを水に溶かすと、 Na₂SO₄ → 2Na⁺ + SO₄²⁻ の形で完全に電離しています。

 これに硫酸を加えても、何も起こりようがありません。

 

 この選択肢が誤りを含む選択肢で、正解になります。

 

 

③ 硫化水素 H₂S と二酸化硫黄 SO₂ の酸化還元反応については、別に解説動画をとりますので、そちらもどうぞ。

 

簡単に説明すると、硫化水素 H₂S 内の硫黄原子 S(酸化数-2)が酸化され単体の硫黄 S に…

 H₂S → S + 2H⁺ + 2e⁻

 

二酸化硫黄 SO₂ 内の硫黄原子 S(酸化数+4)も還元され単体の硫黄 S に…

 SO₂ + 4H⁺ + 4e⁻ → S + 2H₂O

 

これらを合わせ・・・

 2H₂S + SO₂ → 3S + 2H₂O

…の反応で単体の硫黄を生じます。

 

この選択肢は正しいです。


 

 

④ ③が酸化還元反応だったので、それとのちがいをはっきり確認しておけるとよいですね。

 

水酸化ナトリウム NaOH の各原子は、それぞれもっとも安定な酸化数をとっているので、酸化還元反応を起こすことは、まず考えられません。

 

二酸化硫黄 SO₂ 内の硫黄原子 S(酸化数+4)も、そのままの酸化数だろうということです。

 

亜硫酸ナトリウム Na₂SO₃ 内の硫黄原子の酸化数も、Na が+1が2個分で「+2」、O が-2が3個分で「-6」なので、それに合わせて「+4」とわかります。

 

これで、この選択肢は正しいと判断してもいいくらいですが、もう少しみておきます。

 

二酸化硫黄 SO₂ は酸性酸化物であり、水にとけると次のような反応でオキソニウムイオン H₃O⁺ を生じ、酸としてのはたらきを示します。

 

 SO₂ + 2H₂O → HSO₃⁻ + H₃O⁺

 

酸なので、塩基の水酸化ナトリウム NaOH と反応します。

 

NaOH と SO₂ の反応式は、・・・

 

 2NaOH + SO₂ → Na₂SO₃ + H₂O

(そこまで気にすることはないですけど、上の式とこの式の関係が気になってしかたがないという方は、同じく酸性酸化物である二酸化炭素 CO₂ の関連化合物である炭酸水素ナトリウム NaHCO₃ から炭酸ナトリウム Na₂CO₃ の変化を考えてみるとよいです。)

 

正解 ②

問1b 化学平衡

① 圧力を減少させると、圧力を増加させる方向に平衡は動きます。

 気体分子の数が増える方向に、平衡が動くということです。

 

化学反応式の係数で分子の数はわかります。

(左辺)が2+1より「3分子」に対し、(右辺)は「2分子」なので、圧力を減少させたら平衡は左に動くので、この選択肢が誤りを含む選択肢です。

 

② 正反応(→右向きの矢印)が発熱反応なので、逆反応(←左向きの矢印)は吸熱反応です。

 温度を上昇させると、温度を下げる方向(吸熱反応)に平衡が動くので、この選択肢は正しいです。

 

③ 正反応の反応速度を v とすると、k を速度定数とし、SO₂ 、O₂ の濃度をそれぞれ[SO₂]、[O₂]として・・・

・・・の形で表されますが、α、β は実験で求まる値であり、単純に反応式の係数で決まる値ではありません。

この選択肢は正しいです。

 

④ 平衡状態では、一見、反応が止まっているようにみえますが、ここにあるように正反応と逆反応の反応速度が同じなので、そのようにみえます。

この選択肢は正しいです。

 

正解 ①

問2 酸化還元滴定

目的は硫化水素 H₂S の体積ですが、これは標準状態でという条件も与えられているので、H₂S の物質量さえ求められればいいでしょう。

 

与えられた情報を、順に消化していきます。

物質量で考えていくので、まず、0.127gのヨウ素 I₂ の物質量は出しておいた方がよいでしょう。

分子量が254なので、分数で・・・ 

…と、表されます。

 

こういう分数を上手に処理することが1つのポイントとなりますが、10の累乗を使って、分子を分母より大きくすることを考えると、うまくいきます。


0.127=127×10⁻³ と変形できますが、127は分母の254より小さいですよね。

ここは、もう1歩ふみこんで、

 

0.127=1270×10⁻⁴ としましょう。

1270は254でスパッとわり切れて、最初のヨウ素 I₂ の物質量は 5×10⁻⁴ mol だということがわかりました。

 

実験の手順にそってみていきましょう。まず、H₂S と I₂ を反応させました。

この反応は、「⑵式+⑶式」から導かれます。

電子(e⁻)の数があっているので、そのまま辺々たせば、電子のやりとりが合った反応式になります。

 

 H₂S + I₂ → 2H⁺ + 2I⁻ + S ・・・⑸

 

目標は、あくまでこの反応式の H₂S の物質量です。

 

最初の I₂ の物質量 5×10⁻⁴ mol のうちのいくらかがこの反応に使われました。

反応式から H₂S と I₂ は「1:1」で反応しますので、その使われた I₂ の物質量が、そのまま H₂S の物質量になります。

 

この反応で、硫黄 S が沈殿として生じて取り除きます。ろ液中には、まだ I₂ が残っています。

これをチオ硫酸ナトリウムで酸化還元滴定します。

 

ヨウ素-デンプン反応は、小学校でも扱うくらいはっきり表れるのでわかりやすいです。

ヨウ素がなくなれば(イオンになれば)、水溶液の青色はなくなり無色になります。

 

ヨウ素とチオ硫酸ナトリウムの反応も、「⑶式+⑷式」から簡単に導かれます。

こちらも、電子(e⁻)の数があっているので、そのまま辺々たせばよいです。

 

 I₂ + 2S₂O₃²⁻ → S₄O₆²⁻ + 2I⁻ ・・・⑹

 

反応式から、I₂ と S₂O₃²⁻ は「1:2」で反応します。 

 S₂O₃²⁻ の物質量は、与えられた(モル濃度)と(体積)から簡単に計算できます。(体積は 4.8mL ではなく 5mL〔5×10⁻³L〕なので注意です。)

 

 5×10⁻²×5×10⁻³ = 25×10⁻⁵ 〔mol〕

 

元々の I₂ の物質量は 5×10⁻⁴ mol でした。

10の累乗の部分を合わせておくと、計算が簡単なので、こちらに合わせておきましょう。

 

チオ硫酸イオンの物質量は・・・


25×10⁻⁵ = 2.5×10⁻⁴〔mol〕 でした。

 

⑹式より

 I₂ + 2S₂O₃²⁻ → S₄O₆²⁻ + 2I⁻ ・・・⑹

 

この反応に関わった I₂ の物質量は、2.5×10⁻⁴  mol の半分の 1.25×10⁻⁴ mol

 

よって、⑸式より

 H₂S + I₂ → 2H⁺ + 2I⁻ + S ・・・⑸

 

個の反応に関わった I₂ の物質量は、

 5×10⁻⁴-1.25×10⁻⁴ = 3.75×10⁻⁴

 

H₂S の物質量も「3.75×10⁻⁴ mol」とわかりました。

 

あとは、気体の体積は標準状態 で1 mol あたり「22.4L」なので、これに物質量(何 mol あるか)をかけて答えです。

 

 22.4×3.75 は筆算でよいです。

〔L〕単位の数値が出てきますが、答えは〔mL〕単位なので、10の累乗は10⁻³になるように変形しましょう。1×10⁻³L=1mL です。


22.4×3.75×10⁻⁴ = 84×10⁻⁴(L)

         = 8.4×10⁻³(L)

                         = 8.4(mL)

 

正解 ③

問3a 光の吸収を利用して濃度を求める方法

新課程になり、教科書でも「光」について扱われる量が増えたことを受けての問題です。

 

でも、この種の問題は、あまり心配することなく、問題文の説明さえしっかり読めば、自然と答えられるようになっています。(センター試験のころから、最後の問題は一見難しそうな計算問題だけど、実は簡単・・・というパターンは多いですね。)

 

まず、a に入る前の四角囲み内の文の情報から、

実は、方眼が与えられていても、無理に使わなくても大丈夫な場合が多いです。

(そもそも、線引きの持ち込みが不可ですからね)

むしろ、後で示しますが、簡単なグラフを自分でかけばことたります。

 

縦軸を log とすると負の値なので、これは第4象限に存在するグラフになります。

与えられた方眼を使うとすると、左上が原点になるので注意です。

 

方眼を使うとしても、まめにすべての値を入れる必要はないですよ。

 

与えられた数値から、どちらの値も規則的に増加(減少)しているので、比例の関係(グラフにすると原点を通る直線)になるのは、みえますので、 c が 6 (×10⁻³) のとき、log が -0.2 の点をとり、それと原点を通る直線を引けばいいです。

(ただし、表をみてパッとみで「比例」とわからない人は、いくつか点を入れてみて比例関係を確認する必要があるでしょう。)

 

T=0.8 のときの log の値を求めれば、それに対応する c の値(SO₂のモル濃度)もすぐにわかりそうです。

0.8=8/10 とすれば、計算は自然と進みます。

log の値が-0.1と、先ほど考えたものの半分です。

対応する  c の値(SO₂のモル濃度)も先ほど(6)の半分で、3.0 ×10⁻³mol/L とわかります。

 

正解 ③

問3b 透過率の計算

長さLの密閉容器を、2回通過したと考え、1回目で0.8、2回目でさらに×0.8で、0.8×0.8より0.64・・・としてよさそうですが、本当にこの考えでいいのか?…しっかりと確認したいところでもあります。

 

問題文にある条件から、答えを導き出しましょう。

 

長さLの密閉容器を図1のように1つ通過させたときの透過率をT₁、図2のように2つ通過させたときの透過率をT₂とします。T₁= 0.8 であり、T₂ はこれから求めるところで、この値が答えです。

 

問題文に与えられているのは・・・

したがって、T₂=0.64

 

正解 ④


2023年度 共通テスト「化学」の解説は以上です。

ご意見・ご感想などいただけるとうれしいです。


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