共通テスト「物理」過去問解説

2024年度(令和6年度)大学入学共通テスト 本試


どこよりも詳しく、わかりやすい過去問の分析と解説(解説動画付き)


第1問 小問集合

問1 力のモーメントを簡単に処理しよう!

重心には Mg の重力がはたらいています。

 

「点Aのまわりを回転しないような」…とありますから、点Aのまわりのモーメントを調べればよいですが、点Aから重心までの距離や、角度は処理するのがめんどうそうです。(それほどたいへんでも、ないですけどね。解説動画の方で最後に紹介します。)

どうしたらよいかをみていきますが、説明のため先に力Fについてみていきます。

点Aからすると、右回りのモーメントになります。

 

基本は、力の「腕」と垂直の成分を考えます。

(「腕の長さ」というのは正式な用語ではないかもしれませんが、回転軸から力の作用線までの距離のことです。)

 

直角三角形なので、∠A=45° 

 

よって、力Fの腕(線分AB)に垂直な成分は、(1/√2)F とわかります。(下図参照)

腕の長さは √2Lなので、

このように右回りのモーメントは「FL」と出せますが、実はここまでする必要もありません。

 

「力」は作用線上で作用点を移動させて考えていいです。

「腕の長さ」がそれに応じて変化するので、力のモーメント(力×腕の長さ)は同じ値になります。

 

作用線と腕が垂直になるところまで動かすと、考えやすいです。

上図の位置まで力Fの作用点を動かすと、腕の長さはLになり、右まわりのモーメントはF×Lより「FL」と簡単に確認できます。

 

重力Mg も調べやすいところまで移動させましょう。

 

下図のように、床(直線AC)のところまで移動させれば、腕と垂直になります。

求めたいものは、物体が点Aを中心に回転してしまう直前の力Fの大きさです。

 

ぎりぎりでつり合いがとれている状態なので、

(左回りのモーメント)=(右回りのモーメント)

…で等式を立て、それをFについて解き答えです。

正解 ⑤

問2 気体の温度と運動エネルギーの関係

運動エネルギーですので、この原子核の質量を m 、速度を v として「1/2・mv²」を考えればいいですが、これらの数値は与えられていません。

 

温度による運動エネルギーの変化が問われているので、「熱」と「運動エネルギー」の関係を考えましょう。

 

理想気体の「運動エネルギー」と「熱」との関係を示す式は、

 

・・・で、出てきました。(これらの式の導出も示しておきたいのですが、焦点がぼやけるのでここではやめておきます。各自、取り組んでおきましょう。)

 

この式からわかることは、k は定数ですので、

「理想気体の運動エネルギーは温度だけで決まり、絶対温度に比例する」

・・・ということです。

 

設問では、ヘリウム原子について、温度が1500K のときの運動エネルギーが、300K のときの何倍か?…が問われています。

そのまま、わり算すればいいですね。

 

「1500万÷300=5万」・・・(← 0を2つずつ消して、そのまま15万÷3 の計算でさばけます)

 

よって、約50000倍とわかります。

 

 

後半の問題について、

水素原子核とヘリウム原子核の比較が問われています。

 

上でみたように、理想気体の運動エネルギーは「温度だけで決まる(3/2・kT)」ものです。

水素原子核とヘリウム原子核の質量はちがいますが、ここではかかわりません。

同じ値になるので、1倍といえます。

 

正解 2:⑤   3:③

問3 全反射が起こる条件

中学のおさらいです。屈折の方向は・・・

「屈折率の大きい方を下にして考え、まっすぐ行かないで少し落ちる」

・・・と考えておけば、ことたります。

図2を元に確認してみましょう。(ここの説明でわからない人は解説動画の方をどうぞ)

 

「水→ガラス」:条件より水の屈折率 n よりもガラスの屈折率 n' の方が大きいと与えられています。

ガラスを下にして(テスト用紙の右側を下にして)みてみましょう。

まっすぐ行かないで、少し落ちることが確認できます。

 

「ガラス→水」も、ガラスの方が屈折率が大きいので今度はガラスの方を下にして考えると、まっすぐ行かないで少し落ちることが確認できます。

 

このうち、「水→ガラス」のように「屈折率 小→大」に進むときには、入射角をいくら大きくしても何の問題もありません。

 

一方、「ガラス→水」のように「屈折率 大→小」に進むときは、入射角を大きくしていくと屈折角はそれより大きくなるので、いつか、落ちることができなくなります。

 

そのとき、全反射が起こります。

 

よって、選択肢は④~⑥のどれかにしぼられます。

 

次に、全反射する条件をみます。

 

まず、入射角・反射角から確認していきましょう。

 

図2のガラスのところに示された θ’ は、水からガラスに進むときに屈折角を表しますが、ガラスと空気の境界面に垂直な線分を伸ばすことで、ガラスから空気へ進むときの入射角を示していることがわかります。

(下図参照)

 

また、水のところにある θ も、ガラスから空気へ進むときの入射角を示しています。

設問文にも与えられていますが、水とガラスの境界面で、

 

n sinθ=n' sinθ' ・・・① 

 

・・・の関係が与えられています。

(与えられていますが、このくらいは自分で気軽に立てられるようにしておきましょう。「率」のような「割合」は、かけるためにあります。この点については、動画の方で簡単に触れます。)

ガラスと空気の境界でも同様に・・・

 

n' sinθ'=n'' sinθ'' が成り立ちます。

n''=1 なので、最初から・・・

 

n' sinθ'=sinθ'' ・・・② としてもいいでしょう。

 

①、②から n' sinθ' が消去でき、 n sinθ=sinθ''  が成り立ちます。


 

θ'' は90° を超えることはできません。

θ'' =90° すなわち sinθ''=sin90°=1 のとき、全反射が起こります。

正解 ④

問4 磁場中の荷電粒子の運動

磁場中の荷電粒子の運動については、昨年度(2023年度)共通テスト、第1問問4の解説で詳しく扱いました。

そちらも参考にどうぞ。

解説動画も貼っておきます。


ここでは、簡単にいきましょう。

 

まず、「円運動」している場合ですが、円運動をしているということは向心力がはたらいているはずです。

 

この向心力は、電流が磁場から受ける力です。

電流の向きと磁場の向きに、それぞれ垂直にはたらきます(フレミングの左手の法則に現れる力のことです。)。

 

電流の向きは、荷電粒子が運動する xy 平面上での向きであり、

向心力も、xy 平面上で運動している以上、xy 平面上での向きを持っています。

 

これより、磁場の向きは xy 平面と垂直だということがわかり、磁場の方向は z 軸に平行だとわかります。

 

 

次に、「x 軸に平行に直線運動」している場合を考えます。

 

z 軸に平行な磁場がある場合、x 軸に平行に荷電粒子が入ってきたとすると、上でみたように荷電粒子は向心力を得、xy 平面上で円運動を始めます。

 

y軸に平行な磁場があるとすると、x 軸に平行に荷電粒子が入ってきた場合、この場合では荷電粒子は zx 平面上で円運動を始めます。(解説動画の方で説明を試みますが、こういうのは自分でやってみないとわかりにくいものです。まず、自分でもフレミングの左手の法則をもとに考えてみましょう。)

 

「直線運動」をしているということは、運動の向きを変える方向に力を受けていないということです。

x 軸に平行な磁場があっても、荷電粒子の運動(電流)の向きと平行なので、荷電粒子は磁場から力を受けず直線運動を続けます。

 

正解 ⑦

問5 質量欠損による核エネルギーの発生

質量を m〔kg〕、エネルギーを E〔J〕として・・・

 

E=mc² (c は真空中での光の速さ)

 

アインシュタインの特殊相対性理論により導かれる公式です。

 

この公式の意味することは、

「質量とエネルギーの等価性」=「質量にはエネルギーが秘められている」

・・・ということです。

 

この考えにより、核反応により質量の和が小さくなること(質量欠損)や、大きな核エネルギーが解放されることについて、説明できるようになりました。

 

設問に与えられた核反応式は・・・

原子番号、および質量数から、陽子や中性子の数には変化がないことが確認できます。

 

表1に与えられた質量で、(左辺)、(右辺)の質量を比較してみると。

この核反応で、質量の和は減少していることがわかりました。

 

計算は必要ありません。質量が減少したことが確認できれば大丈夫です。

この核反応では、核エネルギーが放出されました。これで、⑦~⑨にしぼられます。

 

 

次に、半減期を求める問題ですが、こんなの計算しなくて、あてはめで十分ですよ。

 

⑨のように40分なら、半分になるのが1回なので、1/2 です。

⑧のように20分なら、半分になるのが2回なので、1/4 ・・・

 

⑦のように10分なら、半分になるのが4回なので、1/16 になり、これが正解です。

(10分で1/2、20分で1/4、30分で1/8、40分で1/16 と考えるといいでしょう。)

 

式でも確認しておきます。こういう簡単な問題で一般化しておくのが有効です。

求める半減期を T とします。

 

何回、(1/2) になるか?・・・(1/2) につける指数が問題になりますが、これは・・・

「40分」の中に、半分になるのにかかる時間「T分」がいくつ含まれているか考えればよいので、わり算で「40/T(回)」と表されます。


正解 ⑦


第1問は以上です。

ご意見・ご感想、お待ちしています。


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